浮浪者……。



大澤真幸「不可能性の時代 ??戦後史の第三局面??」(『世界 1月号』岩波書店



ある日私は湖の畔でヤーホと出会った。その次の日にはホートに。そのまた次の日にはラララに。三人はお互いに兄と妹であったり姉と弟であったりした。ヤーホが長男でホートが長女でラララが次男というわけではない。時々によってラララがヤーホの姉でホートの兄でホートの妹がヤーホでラララの弟であったりするのだ。私を交えて話している間にもその関係はめまぐるしく移り変わっていく。変化に対応する術もなくただ翻弄されるばかりでおろおろする様を見て三人きょうだいはいつも決まってケタケタと笑いながら何故そんなことすらわからないのかと終いには涙まで流し出す。ヤーホ。ホート。ラララ。笑い涙の湖に溺れる私はいつしか魚や水鳥についばまれ骨と化して底に達すだろう。ヤーホ。ホート。ラララ。三人きょうだいは綺麗な湖の畔に住んでいる。ヤーホ。ホート。ラララ。またいずれ誰だか知らない私が三人きょうだいと出会って湖の底にゆっくりとやってくる。お待ちしておりました。ようこそスウィッツランドへ。スウィッツランドへ。